奨学金の過払い金とは?過払い金請求に強い司法書士が解説

奨学金の過払い金とは?過払い金請求に強い司法書士が解説

最終更新日:

グリングリン

奨学金にも過払い金が発生するってニュースで見たんだけど、どんな人が対象なのかな?

僕の友達にも奨学金を利用して進学した人が多いから、いくらか戻ってきたらいいんだけど……。

司法書士・辻本

今回、奨学金の過払い金が認められたのは「奨学金を借りた本人」ではなく「保証人の方」です。

普段は消費者金融やクレジットカードの過払い金請求を行っている、司法書士法人 みどり法務事務所の司法書士 辻本が「奨学金の過払い金」について、法律の知識がない方にもわかりやすく解説いたします。

 


 

奨学金の過払い金とは?

今回、過払い金の存在が認められた日本学生支援機構に奨学金を申し込む際、保証人を立てる「人的保証」と保証機関を利用する「機関保証」のうちどちらかを選択します。

 

人的保証には、原則として「連帯保証人」と「保証人」が1名ずつ必要です。

 

人的保証制度とは…

日本学生支援機構の奨学金貸与を受けるにあたって、一定の条件にかなった連帯保証人(原則として父母またはこれに代わる人)及び保証人(原則として4親等以内の親族で本人及び連帯保証人と別生計の人)が保証する制度です。

あなたが奨学金の返還を延滞した場合、連帯保証人・保証人はあなたに代わって返還をする義務があります。

出典:機関保証リーフレットより

 

奨学金の人的保証について説明した図

奨学金の人的保証について説明した図

画像出典:機関保証リーフレットより

借りたお金を返済する際、本人が返せなくなると、連帯保証人や保証人に請求がいきます。

 

人的保証で延滞してしまった場合の図

人的保証で延滞してしまった場合の図

画像出典:機関保証リーフレットより

 

保証人が複数いる場合、保証人が返済しなければならない(支払い義務がある)のは、全額ではありません。

民法では、複数の保証人がいる場合、各自が負担する債務(借金)の額は、「保証人の数」に応じて等しい割合で分割されます(今回のように2人いる場合は、それぞれ1/2になる)。

 

(数人の保証人がある場合)
第四百五十六条
数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。

(分割債権及び分割債務)
第四百二十七条
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

出典:e-Govポータル(https://www.e-gov.go.jp)

司法書士・辻本

保証人が複数いる場合、保証人の責任の範囲が限定されることを「分別の利益」と呼びます。

※ただし、連帯保証人には分別の利益が認められない

 

しかし、日本学生支援機構は保証人にも、全額の返済を請求していました。

原告(訴えを起こした人)は、半額の返済義務しかなかったのに半額以上を支払っていました。

半分以上支払った分(過払い分)は、日本学生支援機構にとって「不当利益」となるので、裁判所が過払い金を返還するよう命じたということです。

奨学金の過払い金にも利息がつく

また二審で高等裁判所(控訴審判決)は「過払い金の利息分」も加えて返還するように命じました。

グリングリン

過払い金の利息ってなに?

司法書士・辻本

奨学金やキャッシング、ローンを組んでお金を借りる際、私たちは「借りたお金(元本)」に「利息」を上乗せして返済していきます。

過払い分=本来受け取るべきではない不当利益なので、過払い金にも利息が発生します。

 

不当利益を受け取ると、法的に「悪意の受益者」と認定され、受けた利益に利息を足して返還することになります。

 

(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

出典:e-Govポータル(https://www.e-gov.go.jp)

司法書士・辻本

過払い金が発生した時点(弁済翌日)から返還日までの利息分(年5%)を加えて返還されると考えられます。

※民法改正で「令和2年4月1日以降に発生する過払い金利息」の利率は年3%になるが、それ以前に一度でも発生している場合は年5%になると考えられる

どんな裁判が行われていたか?

原告(訴えを起こした人)

教え子の保証人になっていた、元高校教諭の男性
→ 保証人として約94万円を請求され、約65万円を支払った

②(故人である)夫が、甥の保証人だった女性
→ 夫に保証人として請求された約242万円を全額支払った

 

※どちらも借りた本人の父親が連帯保証人だったが、支払い能力がなく、保証人に請求が移った

奨学金の過払い金裁判の経緯

2021年5月13日(一審)
札幌地方裁判所が日本学生支援機構に「半額を超える請求分は不当利益」だとして計約140万円の返金を命じる

→ ①の男性に約18万円、②の女性に約121万円

 

2021年5月13日
日本学生支援機構が札幌高等裁判所に控訴

 

2022年1月25日(控訴審・第一回口頭弁論)
札幌高等裁判所が和解を勧告し、協議が始まる

 

2022年5月19日(二審・控訴審判決)
札幌高等裁判所が日本学生支援機構に「過払い分」と「利息」の約200万円の支払いを命じる

→ ①の男性に約18万円、②の女性に約121万円に利息分計約61万円を上乗せ

裁判長「日本学生支援機構は、過払い分が不当な利益と認識しながら支払いを受けた【悪意の受益者】というべきだ」

 

2022年6月2日
日本学生支援機構が「最高裁判所への上告を断念する」と発表

また、原告と同じように「半額を超える返済をしてきた保証人(約2000人)」に過払い分として計約10億円を返金する方針を明らかにした。

判決後、日本学生支援機構のホームページに公開された文章

今後、請求が認められた原告の方に対して所要の支払手続を進めるとともに、本機構に記録が存在する過去5年以内の返還完了事案を含め、保証人の方から自己の負担部分を超える弁済を受けた返還金についても、個々の保証人にご連絡した上で速やかに超過額の返金手続を進めてまいります。

対象となる方々には、今月中旬から7月上旬頃にかけて、順次ご連絡を差し上げる予定です。

なお、これまで保証人の方への請求に当たっては返還未済額の全額を請求してきたところですが、今後は判決内容に照らし、返還未済額の2分の1の額を請求させていただくこととします。

出典:札幌高等裁判所判決を踏まえた今後の保証人への対応について|日本学生支援機構

 

奨学金の過払い金が発生する対象者

返済義務(半額)を超えて支払った(日本学生支援機構にデータが残っている)2017年4月以降に返済を終えた保証人、現在返済中の保証人。

※2017年3月以前に完済した保証人でも、返済を証明する資料などがあれば、返金に応じる可能性がある

また過払い金は「最後の取引から10年」経つと時効になり、取り戻せなくなります。

返済など最後の取引から10年経過している方は、奨学金を過払いしていても返還することができません。

司法書士・辻本

過払いのある保証人は、約2000人。計約10億円が返還されるそうです。

※原告弁護団によると、2010~2020年の間に全額を請求された保証人は1969人。うち、133人が分別の利益を主張し日本学生支援機構は適用しているという

 

対象者が過払い金を取り戻す方法

2022年6月中旬~7月上旬にかけて、対象者には、簡易書留で通達するそうです。

案内に従って返金を受けることができます。

しかし日本学生支援機構には過去5年分のデータしか残っておらず、2017年3月以前に奨学金を(全額)完済した保証人の方には、連絡がこない可能性が高いです。

2012~2016年に奨学金を返済した保証人の方は、過払い金の存在を知らないまま時効を迎えてしまう可能性があります。

心当たりがある方は、日本学生支援機構にご連絡ください。

日本学生支援機構

奨学金に関するお問い合わせ
電話:0570-666-301

※海外からの電話、一部携帯電話、一部IP電話からは03‐6743‐6100
受付時間:月曜~金曜 9時~20時(土日祝日・年末年始を除く)

 

「奨学金の過払い金」と「消費者金融やクレジットカードの過払い金」の違い

グリングリン

本人が返済する奨学金には、過払い金は発生しないの?

司法書士・辻本

日本学生支援機構の第一種奨学金は、無利息です。

また第二種奨学金の場合、最大でも年利3%なので、消費者金融やクレジットカードなどで発生する「利息制限法の上限を超えた過払い金」は、発生しません。

「奨学金の過払い金」と「消費者金融やクレジットカードの過払い金」の違い
 

「利息制限法の上限を超えた過払い金」については詳しくはこちら↓↓
【関連記事】過払い金とは?過払い金請求の対象期間はいつからいつまで?

 

グリングリン

消費者金融やクレジットカードの借金で発生した過払い金の場合、貸金業者から「過払い金が発生してます」って連絡がくることはない。

自分で発生しているかどうか調べて、請求しなきゃいけないんだよね。

司法書士・辻本

そうなんです。2007年ごろまでに消費者金融やクレジットカードでキャッシング経験のある方にも、過払い金が発生している場合があります。

こちらは「利息制限法」という法律の上限を超える違法な利息が取られていたので、借りた本人や代わりに返済した保証人の方が請求することができます。

 

当時、お金を借りる人を守る「利息制限法」と貸金業者を規制する「出資法」という2つの法律の上限金利が異なり、貸金業者は「出資法」の高い上限金利(29.2%)をもとに金利を設定していました。

 
過払い金が発生するしくみ(グレーゾーン金利)

しかし、この高過ぎる金利(グレーゾーン金利)のせいで返済ができなくなったり、返済のためにほかの業者で借金を重ねてしまう方が増え、2006年(平成18年)の最高裁判所で「グレーゾーン金利は違法」という判決が下りました。

 

2007年(平成19年)に貸金業法が改正、2010年(平成22年)にはグレーゾーン金利は完全に撤廃され、グレーゾーン金利(=利息制限法の上限を超えて払い過ぎた利息)を「過払い金」として返還請求できるようになったのです。

 

当事務所では、LINEやメール、電話を使って無料で「消費者金融やクレジットカードの過払い金の確認」をすることができます。

 

「借入先(業者名やカード名)」と「いつごろ借りたか」をお答えいただければ、すぐに発生しているかどうかお伝えできるので、心当たりのある方は、ぜひ一度確認してみてください。

※下記の問い合わせでは「奨学金の過払い金の有無」にはお答えできません

 
 

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